負けないで
恋には色んな形がある。
大人の人から見たら、中学生の恋は、恋のうちに入らないかもしれない。
だけど、子どもは子どもなりに一生懸命に恋をしてるんだ!
小学生の頃だって「好きだな~いいな~」と思う子はいたけど、兄弟みたいにみんなで楽しく過ごしている中で芽生えた感情だったと思う。
あれを初恋かというと、違うって言いきれる私がいる。
だけど、今回のは絶対に「恋」だ!!
私の心を躍らせたのは、同じ学年のサッカー部のエース。
彼は、勉強は苦手だけど、運動のセンスはピカイチ。
ただ、彼の凄いところは、才能にかまけることなく、誰よりも朝早く来て、そして部活終了後も一人だけグラウンドに残って、毎日一生懸命練習に取り組んでいたところだ。
ひたむきな彼は、凄く凄く眩しかった。
偶然にもその姿を知った時、「自分も頑張らなきゃ!」と勝手に勇気を貰い、次の日から彼がグラウンドにいる間は、私は教室や図書室で受験勉強に取り組むようになった。
そんな生活を送ってると、自然と登下校が同じ時間帯になり、距離がグッと縮まった。
ラッキーなことに同じ通学路だったから、二人で会話する時間も増え、友達以上恋人未満っていうのかな、そんな感じになっていった。
そして、中学3年生の秋。
進路を考える時期になると、二人とも同じ高校を考えるように・・・
でもね、それは無理な話。
だって、彼はスポーツを優先させてきた人だったから、私が望む志望校へは到底届かなかった。
彼の口から「頑張るから!俺、諦めないから!」という言葉を聞くたびに、どんどん胸が苦しくなった。
大人たちはこんなことを言うとバカだなって失笑するかもしれないけど、あの時の私は彼と一緒にいつまでもずっといたかったの。
だから、いつしかこんな考えが頭をよぎるようになっていた。
志望校、下げようかな・・・
その言葉を口にした時、彼に言われた。
「頑張るお前が好きだったのに。俺のために諦めるなんて、言うなよ。俺がお前を苦しませてるなら、俺たち、別れよう。」
あぁ、なんてことなの!?
受験間近の大事な時期に、失恋してしまった・・・
暫くの間は、何もする気が起きなかった。
塾も休んだ。
その間、ずっと聞いていたのは、彼との思い出のCD。
このまま恋も受験もどっちもダメになるなんて、それだけは絶対に嫌だ・・・
そんな恥ずかしい私を彼には見られたくない・・・
それからは、とにかく必死に机に向かった。
「わき目もふらず」とは、まさしくこのことを言うのねってくらいに。
晴れて高校に合格し、入学式の朝。
玄関の扉を開けると、そこには同じ高校の制服を着た笑顔の彼が立っていた。
え・・・!?
難関と言われて少数しか入れない『スポーツ推薦枠』を彼は見事勝ち取っていたのだ。
失恋したはずなのに、こんなにも清々しい恋をしていたなんて、これって私の生涯の宝物かもしれない。
そんなふうに、今、あなたに恋したことを心から誇りに思える私がいる。
負けないで
歌手:ZARD
作詞:坂井泉水
作曲:織田哲郎