I've Never Been To Me(愛はかげろうのように)
あの頃、女子大生だった私達。
卒業してからも定期的に集まっては、近況を伝え合う食事会を開いてきた。
社会人やってた頃は、会社の愚痴、恋の悩みなど赤裸々に語り合った。
28歳の時、私達の中からも結婚第一号が出たわ。
30歳まで、あと2年。
焦らないわけじゃなかったのよ。
でもね、その当時、海外出張することが多い部署にいた私は、各国を飛び回る日々を過ごしていた。
最初に結婚した友人に赤ちゃんができた時なんかは、イタリアの美しい夜景を眺めながらワインを飲んでいたかしら。
こうやって日本を飛び出して世界中を旅してると、刺激的なことが多くて、当時の私は「家庭なんかにこじんまり納まるなんてバカみたい」って、どこか優越感に浸っていたわ。
でも、そのうち残りの友人達が、あれよあれよという間に寿退社して、それぞれの幸せを掴んでいった。
私も恋の一つや二つなかったわけじゃないのよ。
だけど、あの頃の私には、誰かの胸に飛び込んで、その人と人生を歩んでいく気持ちにはなれなかった。
そして、お互い40歳を祝う、久々の女子会。
「うわぁ!あなた変わってないわね!相変わらず、お洒落な服着てるわね~」
「ほんとよ~!お肌も綺麗だし、さすがキャリアウーマン!」
その後は、みんな、互いに旦那や子ども達の愚痴合戦を繰り広げる。
子どもの反抗期に、習い事の話。
カタツムリのように脱ぎっぱなしの旦那の靴下の話。
そして、時折、私にこう言うの。
「あなたはいいわよね~自由で」
私は微笑みを浮かべつつ、シャンパーンの気泡を眺めながら、心の中で呟くの。
ねぇ、みんな。
私は、あなた達が体験できないことを確かにたくさんしてきたわ。
それを「自由ね」って羨ましく思うかもしれないけれど、でもね、
実際は、まるで行く先もわからない浮雲のようなものなのよ。
あなた達には、繋ぎとめてくれる人がいる。
受け止めてくれる場所がある。
そこに幸せがあるのよ。
だけど、私は、これからも彷徨い続けるの。
自分で選んだ道だから。
I've Never Been To Me(愛はかげろうのように)
歌手:Charlene(シャリーン)
作詞:Ron Miller
作曲:Ken Hirsch