慟哭

「俺のこと、誰よりもよくわかってくれてるのは、お前だよ。」

 

その言葉が何よりも嬉しく、私には誇らしかった。

彼の周りにいるどの男友達よりも、私は彼の信頼を勝ち取ったのだから。

 

休日の映画に、ランチ、どんな時も私は彼の傍にいた。

服を買いに行く時も、そう。

プライベートの服に、仕事のネクタイの一つにしても、必ず振り向いては「どう?」って私に聞いてくる。

「お前のお墨付きがあれば、俺、何でも安心できるんだよな。」って、よく言ってた。

なんだか私色に染まっていく彼を眺めてるのが、最高に幸せだった。

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周囲は、みんな、私と彼が付き合ってると思ってた。

いつも「お似合いの二人」って言ってくれたけど、彼からの決定打はなかった。

 

 

そんなある日、いつものように彼から仲間内の食事に来ないかと連絡が入った。

いつものレストランに、いつもの顔ぶれ。

でも、その日は、少し違う顔がそこにあった。

私よりも年下のおとなしそうな可愛らしい女の子が一人、テーブルの隅にちょこんと座っていたのだ。

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誰かの彼女かな?

そう思いながら、いつものように彼が手招きするので、傍に腰かける。

 

アルコールが入るにつれて、食事も進み、会話も弾む。

そんな中、彼がそっと私の耳元で囁いた。

「ねぇ、あの子、どう思う?」



頭を何かで殴られたみたいな衝撃が走りつつも、平静を装って、いや、むしろ笑顔を浮かべながら、私はこう言っていた。

「お似合い。あんたの好きそうなタイプって感じ。」

 

その言葉を聞くと、彼は一人ポツンと座る彼女のもとへと歩みを進めていった。

それはまるで、この場の雰囲気に馴染めずに不安や孤独を感じている少女にそっと手を差し伸べる王子様のように・・・

 

なんだか急に眩暈に襲われて、私はその場を後にした。

 

独り、電気もつけずに真っ暗な部屋の中に帰ると、彼からの着信音。

もしかして、私の良さに気づいた??

そんな一縷の望みを抱きながら、電話に出る。

 

「俺、あの子と付き合うことになった。お前のお陰。一番に報告したくてさ。お前も早くいい男、見つけろよ。」

彼は、そんな言葉を残して、電話を切った。

 

漆黒のような闇と静けさが、私を苦しめる。

あいつを好きだという想い、私をその気にさせたことへの腹立たしさ、

そして何より、勝手にあいつの彼女気取りをしていた自分の愚かさ、惨めさ・・・

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その夜、湧き上がる様々な感情になす術もなく、私はただ涙を流すしかなかった・・・

 

慟哭

歌手:工藤静香

作詞:中島みゆき

作曲:後藤次利