Flavor Of Life

大学生って、不思議な期間だよな。

大人でもない、子どもでもない。

中途半端って言われてしまえばそれまでなんだけどさ。

理解できるのは、同じ大学生だけなのかもしれないな。

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あなたが屈託のない笑顔でそう語ったあの日。

あなたに淡い恋心を3年間抱き続けた私は、今まさにその想いを伝えようとしていた瞬間だった。

 

でも、その言葉を聞いた時、伝えることで、そんな居心地のいい関係までも失ってしまうことが急に怖くなった私は、結局再び自分の胸にそっとしまい込んだのだった。

 

確かに、私達は「恋人」でもなく、「友達」でもなく、そう、それはまるで何でもわかりあえて、何もかも相談できる「親友」というような関係。

一見、安定した関係に見えるけど、そうじゃないんだよ、きっと。

 

あなたが誰かのものになってしまった時、これまで何気なく出来ていた会話も出来なくなってしまうと、私は思ってる。

あぁ、今の私は、なんとも言えない「切なさ」に押しつぶされそうだよ。

 

 

大学を卒業し、一年が過ぎた。

お互いが社会人として、久しぶりに出会った日。

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ようやく、「親友」から安定の「恋人」の関係へと進んだ私。

 

愛してるよ

 

嬉しいんだけど、なんだか素直に受け止められない私がそこにはいた。

あなたには「大好き」って言葉の方が似合ってた・・・

 

その時、初めて気づいたの。

私が恋していたのは、「あの頃のあなた」だったんだと。

 

お互い社会人になって、社会の荒波に揉まれ、色んなこと経験して、あの頃のままの自分でいられるはずもないのにね・・・

私、あなたに「あの頃のあなた」を求めていたみたい・・・

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でも、この一年間、私の傍にいてくれたのは、紛れもなく「今のあなた」。

この一年、大好きなあなたと一緒に過ごせて、幸せであったことには変わりはない。

でも、理想と現実のはざまで揺れ動く私がいる・・・

 

この戸惑いがなくなるまで、あなたの傍に居続けたら、私の中でも答えが見つかるのかな。

あなたからの言葉に心から喜べる日が来るのかしら。

 

Flavor Of Life

歌手:宇多田ヒカル

作詞:宇多田ヒカル

作曲:宇多田ヒカル

 

Rainy Blue

二年前の今日、私の最後の恋が終わった。

 

出会いは同じ職場というありきたりのもので、私は彼よりも5歳年上の先輩だった。

 

お互い、地方出身者で、誰に気兼ねすることもなく、自然と一緒に住むようになった。

職場では同じプロジェクトを任され、深夜までトコトン二人で話し合った日々。

会社での愚痴もお互いスッキリするくらい吐き出して。

お互い、阿吽の呼吸で仕事もこなして。

なんだか、二人でいれば、無敵のような感じがしていた。

 

そんなこんなで支え合って五年間付き合ってきたけれど、いつしか「結婚」という二文字のタイミングが正直わからなくなっていた。

 

このままでもいっか・・・

夫婦って空気みたいって言うし、何も形式にこだわらなくても・・・

 

でも、そう思っていたのは私だけだった。

彼の中では「夫婦」っていう感覚よりも、「同志」って感じになっていたらしい。

まぁ、振り返ると、確かに仕事の話が多かったかな・・・

彼は、次第に二人の空間にいることに疲れてしまったそうだ。

それを聞いて私は、彼を責めることもせず、引き留めることもせず、二人の関係にピリオドを打った。

 

何故かって?

おそらく、私の「大人の女」としてのプライドがそうさせたのだろう。

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それからは再び先輩と後輩の関係に戻った私達。

たぶん多くの別れを選んだカップルがそうであるように、二人でいる時間が長かった分、私にも喪失感や虚無感が生まれた。

それらに飲み込まれないよう、がむしゃらに仕事に打ち込み、とにかく独り物思いに耽る時間を作らないようにする日々だった。

 

 

そんな私の姿を神様も哀れんだのだろうか。

半年後、彼の異動が決まり、私達は社内で顔を合わせることもなくなった。

その辺りから、友人達も「次にいけ」と言わんばかりに、週末は合コンをセッティングしてくれ、今では休日を過ごすヒトも出来た。

お陰で、彼の幻を見ることもなくなったような、そんな気が私もしていた。

 

でも、それは、私自身も気付いていなかった強がりだったのかもしれない。

 

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夏の夕立が降る直前、少し蒸し暑さを感じる中、私は駅へと足早に歩いていた。

そんな帰路につこうとする雑踏の中、ふと懐かしい香りが・・・

 

それは、彼が二人の時にだけ付けていた香り・・・

 

止まることのない人の流れの中、懸命に辺りに彼の姿を探す私。

どこにいるの?

 

次第に遠ざかっていく香りに、心の中で必死に叫ぶ。

行かないで・・・

 

どれくらいの時間が経ったのだろうか。

空は黒い雲で覆われて、ポツリポツリと雨が降り始めていた。

 

立ち尽くす私の身体は、何故だか少し火照っていた。

一瞬だけど、彼の温もりを感じたせいだろうか。

 

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もう暫く、この雨に打たれよう。

彼の温もりも、香りも、消えてゆくまで・・・

もう暫く、この雨に打たれよう。

彼との想い出が、涙で消えてゆくまで・・・

 

Rainy Blue(レイニーブルー

歌手:徳永英明

作詞:大木誠

作曲:徳永英明

編曲:武部聡志

 

これは誰かの物語

 

私達の周りには、数多くの素敵な曲が溢れている。

 

 

同じ歌詞でも、聞く人の置かれている状況によって、また雰囲気が変わるものである。

 

 

ここには、そんな誰かの物語のひと雫が描かれている。

 

 

主人公達の心の声に、そっと耳を傾けてあげてほしい。