Rainy Blue

二年前の今日、私の最後の恋が終わった。

 

出会いは同じ職場というありきたりのもので、私は彼よりも5歳年上の先輩だった。

 

お互い、地方出身者で、誰に気兼ねすることもなく、自然と一緒に住むようになった。

職場では同じプロジェクトを任され、深夜までトコトン二人で話し合った日々。

会社での愚痴もお互いスッキリするくらい吐き出して。

お互い、阿吽の呼吸で仕事もこなして。

なんだか、二人でいれば、無敵のような感じがしていた。

 

そんなこんなで支え合って五年間付き合ってきたけれど、いつしか「結婚」という二文字のタイミングが正直わからなくなっていた。

 

このままでもいっか・・・

夫婦って空気みたいって言うし、何も形式にこだわらなくても・・・

 

でも、そう思っていたのは私だけだった。

彼の中では「夫婦」っていう感覚よりも、「同志」って感じになっていたらしい。

まぁ、振り返ると、確かに仕事の話が多かったかな・・・

彼は、次第に二人の空間にいることに疲れてしまったそうだ。

それを聞いて私は、彼を責めることもせず、引き留めることもせず、二人の関係にピリオドを打った。

 

何故かって?

おそらく、私の「大人の女」としてのプライドがそうさせたのだろう。

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それからは再び先輩と後輩の関係に戻った私達。

たぶん多くの別れを選んだカップルがそうであるように、二人でいる時間が長かった分、私にも喪失感や虚無感が生まれた。

それらに飲み込まれないよう、がむしゃらに仕事に打ち込み、とにかく独り物思いに耽る時間を作らないようにする日々だった。

 

 

そんな私の姿を神様も哀れんだのだろうか。

半年後、彼の異動が決まり、私達は社内で顔を合わせることもなくなった。

その辺りから、友人達も「次にいけ」と言わんばかりに、週末は合コンをセッティングしてくれ、今では休日を過ごすヒトも出来た。

お陰で、彼の幻を見ることもなくなったような、そんな気が私もしていた。

 

でも、それは、私自身も気付いていなかった強がりだったのかもしれない。

 

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夏の夕立が降る直前、少し蒸し暑さを感じる中、私は駅へと足早に歩いていた。

そんな帰路につこうとする雑踏の中、ふと懐かしい香りが・・・

 

それは、彼が二人の時にだけ付けていた香り・・・

 

止まることのない人の流れの中、懸命に辺りに彼の姿を探す私。

どこにいるの?

 

次第に遠ざかっていく香りに、心の中で必死に叫ぶ。

行かないで・・・

 

どれくらいの時間が経ったのだろうか。

空は黒い雲で覆われて、ポツリポツリと雨が降り始めていた。

 

立ち尽くす私の身体は、何故だか少し火照っていた。

一瞬だけど、彼の温もりを感じたせいだろうか。

 

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もう暫く、この雨に打たれよう。

彼の温もりも、香りも、消えてゆくまで・・・

もう暫く、この雨に打たれよう。

彼との想い出が、涙で消えてゆくまで・・・

 

Rainy Blue(レイニーブルー

歌手:徳永英明

作詞:大木誠

作曲:徳永英明

編曲:武部聡志