あの日、夕陽に染められた茜色の空の下、私は突然、彼に別れを告げられた。
結婚の話まで出ていて、このまま二人で幸せになると思っていた私にとって、余りの衝撃で言葉がなかなか出てこない・・・
「別れよう」って、どういうこと?
私、あなたを幻滅させるようなこと、何かした?
一体、何が原因なの??
とにかく、この沈黙を破らないと・・・
「ちょっと待って!いきなりどうして?私、何かした??酷いよ!理由を聞かせて!」
でも、返ってきた言葉は、「君とは人生を一緒に歩めない。ただそれだけだ。」
今まで見たこともないような冷ややかな彼の瞳。
それを見た時、私は彼の気持ちを変えることはもう出来ないと悟った。
あの日から、私は夕暮れが大嫌いになり、ネオンが冴える時間まで働く日々を送るようになった。
理性がある状態で、暗い部屋に帰るのは辛かった。孤独や虚無感に耐えられるほど、私の心は回復していなかったからだ。
それで、毎夜、ふらりとどこかのBarへと足を運ぶ日々が続いた。
今日も独り、ウィスキーをロックで注文する。
最初の頃は、とにかく酔えるからという理由で頼んでいたけど、今ではスモーキーな香りに心がホッと落ち着くまでになった。
少し身体が火照ってきた頃、聞き覚えのある声が・・・
振り返ると、そこには彼の幼馴染がいた。
もしかして、あの人も・・・
急に鼓動が速くなる。
その場から逃げるように店を立ち去った私を追いかけてきたのは、あの人ではなかった。
「待ってくれ!君にどうしても伝えないといけないことがあるんだ!あいつがどうして君と別れたのかを・・・」
私の足が止まる。
それは、私が一番知りたかったこと。ずっと抜けない心の棘。
「あいつは、心から君のことを愛していた。本気で結婚するつもりだったんだ。だけど、スキルス性の癌だとわかり、あいつは見ていられないほど悩んでいた。あいつ、言ってたよ・・・『神様はどうして僕達を出逢わせたんだろうな』って。残された時間を君と過ごすことも考えていた。でも、そうすれば、君に永遠の辛い別れを味わわせてしまう。それで、あいつ、あんな別れ方をしたんだ。」
あぁ、私、何も知らなかった。
彼がそんなに苦しんでいたなんて・・・
いつも傍にいたのに、愛していたのに、どうして気づけなかったんだろう。
あぁ、どうして、私、彼のもとを離れてしまったんだろう。
痛みと死への恐怖の中に、彼を独り置き去りにしてしまった・・・
二度と会えなくなるなら、最後まであなたに寄り添うべきだったのに・・・
リフレインが叫んでる
歌手:松任谷由実
作詞:松任谷由美
作曲:松任谷由美
※ 本作は多くの歌手によってカバーされたり、ライブなどで歌われている。
今回は、ライブでJUJUさんによって披露されたもの(儚い雰囲気)からインスピレーションを受けて創作している。