あなただけ見つめてる
恋が人を狂わせる?
そんなこと、あるわけないじゃん!
男の色に染まるなんて、自分じゃなくなるってことでしょ!?
今、21世紀!男女平等なんだから、そんな夢見る夢子みたいなこと言わないの~!!
いつもの気の合う仲間たちとの女子会。
ハイボール片手に馬鹿笑いするのが最高に楽しかった。
彼と出会うまでは・・・
三十路に差し掛かろうとしてる私。
職場でも、もう慣れた業務に代わり映えのない人間関係だから、楽っちゃ楽なんだけど、刺激がない日々を送っていた。
そんなある日、関連会社への出向を命じられた。
出向いた先は、就業形態ももちろん違うし、何と言ってもそれまで誰にも遠慮せずお気楽にやってきていた私にとっては、その日から息が詰まる日々となった。
しかも、最悪なことに業務終了時間の関係で、いつもの女子会には顔を出せる機会がパタリとなくなり、ストレス発散することもできない。
2週間耐えたけど、さすがに誰もいないオフィスで、思わず机に突っ伏しながら呟いた。
あぁ、神よ・・・
何故、この歳になって、試練を与え給うのか・・・
すると、「大丈夫?」と頭上から柔らかい声。
ふと見上げると、スーツ姿の男性が立っていた。
誰もいないと思っていた私は、漫画のようなセリフを聞かれたかと思うと恥ずかしくて、赤面してしまった。
「出向に来てくださってる方ですよね。バタバタしてて歓迎会もまだでしたよね。失礼しました。どうですか?今からちょっと食べに行きませんか?」
もう長らく男性と食事になんて行ってなかったから、普段の私だったら、きっと断っていたと思う。
でも、その日は、メンタル的に限界だったのか、誘われるまま食事へ。
彼は肩ひじを張らなくてもいいお店をチョイスしてくれ、たわいもない会話で私の心をほぐしてくれた。
その優しさが、本当に嬉しくて・・・
それからというもの、仕事終わりに二人で食事をする機会も増え、自分が穏やかにいられる人にようやく私も出会うことができたように感じた。
そして、膨らみ続ける彼への想い。
あぁ、この恋、大切に温めたい・・・
だから、私、あなたに寄り添っていく・・・
あなたが求めるなら、私は全てを捨てられる。
あなたが望む私になれるよう、変わっていくね。
ただあなただけ見つめて、生きていくわ。
一年後。
招待状を出した女子会仲間達との久々の再会。
「へぇ!すっかり貞淑な奥様じゃん!」
「ほんと!一番結婚に遠い人が、一番早くお嫁に行っちゃうなんて!」
「マジで感じ変わったよね~」
そんな中、一番の親友が、ウェディングドレス姿の私の耳元で、最後にこう囁いた。
「ねぇ、あんた、本当に幸せ??」
歌手:大黒摩季
作詞:大黒摩季
作曲:大黒摩季
編曲:葉山たけし